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サウジアラビアの首都リヤドで2017年5月20日、ムハンマド皇太子(左、当時は副皇太子)と会談したトランプ米大統領=AP

 トランプ米大統領が13~16日、サウジアラビアなど中東3カ国を訪問します。1期目の2017年の初外遊先もサウジでしたが、安全保障と中東政策が専門のダリア・ダッサ・ケイ米カリフォルニア大学ロサンゼルス校上級研究員は、その共通点と相違点を指摘します。

 ――トランプ氏の2期目の初外遊はローマ・カトリック教会のフランシスコ前教皇の葬儀のために訪れたローマでしたが、外交的には今回が初の本格外遊です。行き先の選択をどうみますか。

 トランプ氏は1期目も最初の外遊先がサウジでした。米国の経済的な利益を促進できる相手と、取引重視の政策を優先する傾向があり、石油資源の豊富な湾岸の富裕国は非常に合理的な対象です。こうした考え方は、1期目の再現と言えるでしょう。

 今回トランプ氏は1兆ドル(約145兆円)の対米投資を取り付けると公言しており、ミサイルの売却など大規模な武器取引の発表が予想されます。

人権は議題にすらならない

 ――バイデン前大統領のサウジ訪問時は、実権を握るムハンマド皇太子に人権問題や民主主義を提起するかが注目されました。

 バイデン政権では人権を物事の中核に据えると言いながら、それがしばしば後回しにされた点が批判されました。トランプ氏の場合はどのような利益を得て大きな成果として国内にアピールできるかが焦点で、人権は俎上(そじょう)にのせず、口にすることもないので、言動のギャップはありません。実利が得られるかどうかが全て。国際法や規範、人権といったものは議題にすらなりません。

 米情報機関が、米紙ワシントン・ポストに寄稿していたサウジ人記者ジャマル・カショギ氏の殺害にサウジ政府が関与していた可能性を指摘した後も、トランプ氏は皇太子をかばいました。人権問題はトランプ氏個人や米政権が関心を持つ話題ではないのです。

 湾岸諸国に対するトランプ氏のアプローチは過去から一貫していますが、一方で地域情勢は大きく変わりました。大きな要因の一つがパレスチナ自治区ガザです。

 ――イスラエルとイスラム組…

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